スイスの不妊検査・治療〜体験談〜

 家族計画はデリケートな話題のため、友人同士などでは気軽に情報交換しにくいことも。日本と同様にスイスでも不妊治療は様々なクリニックが存在していますが、治療方法の体験談を耳にする機会は少ないかもしれません。
 今回は、家族計画の一環としてスイスで実際に人工授精を体験したスタッフの体験談をもとに、不妊検査から治療についてご案内していきます。

まずは不妊検査から

 妊娠を望んでいてもなかなか授からないという場合、まずは不妊検査をすることになります。すでに妊活を行っているカップルだけに限らず、「今後妊娠を希望しているので、念のために検査しておきたい」という場合でも大丈夫。悩みがある場合は、不妊検査も可能なお近くの婦人科へ相談に行きましょう。

 不妊検査をするクリニックは、今後も検査や治療のために通うことになりますので、なるべく家から近いところを選ぶと便利です。

 人気のあるクリニックですと初診の予約が数ヶ月先になってしまう場合もあるのだとか。余裕をもって計画を立てることをおすすめします。

①初回診察日

 この日は必ずパートナーと一緒にクリニックへ行きましょう。今後の検査内容などをお互いに知っておく必要がありますし、不妊治療には協力し合う姿勢が大切です。

 診察の時間に医師からは、お互いの健康状態や嗜好品、妊娠を希望してどれくらいになるか、などの質問がありました。その後の検査は日本の不妊検査とほぼ流れは同じようです。

 初日に行なった検査は3つ。クラミジア検査(95フラン)・細胞診検査(18.30フラン)・超音波検査でした。

②生理中の診察

 ホルモン血液検査を行うため、生理中に一度受診しました。

③生理終了後の診察

 生理が終了したら、また別の検査を行うので再度受診します。今回は子宮卵管造形という検査で、摂取する薬品に含まれる成分の関係で、ヨードアレルギーのある方は医師に相談する必要があるそう。
 この検査前に、医師に言われて痛みを軽減するという薬を服用しました。ですので、何も摂取しない状態よりは痛みが少ないのでしょうが、やはりカテーテルなどの異物が体内に入っていくため、なんだか気持ち悪い感じがしたのを覚えています。もし、卵管に異常がある場合は、さらに痛みを伴うことがあるのだそう。

④排卵期の診察

 今度は排卵期にホルモン血液検査をするため、再度の受診。

⑤精子検査

 こちらは男性パートナーに必要な受診で、女性と違い、診察のタイミングは決まっていません。男性とクリニックの予定を合わせて予約をすることとなります。検査費用は約460フランでした。

不妊検査をしてみてわかったこと

 以上が、今回行った不妊検査の流れです。私たちの場合、合計でかかった費用は約890フラン。費用は健康保険が適応されることがありますので、保険会社に適用範囲をあらかじめ確認しておくとよいでしょう。

 通常であれば、生理前後と排卵時期の検査を合わせて初診の日から数えると一ヶ月ほどで全ての行程が終わり、結果が出るようです。

 なお、医師から検査結果の話がある最終日も、カップルお二人で行かれることをおすすめします。検査結果によって、その後の治療方針が決まるため、結果を二人でしっかり理解することが大切です。

 特に異常がみられない場合、治療はせず自然に任せるという選択もありますし、タイミング法を医師の指導のもと試すという選択も。

 また、鉄分やビタミンD不足は妊娠しにくい身体になってしまう可能性があるそうですので、可能であれば、血液検査の際にそのデータもとってもらうようにお願いすると良いかもしれません。

一番自然に近い治療、タイミング法

 不妊検査後にはじまる不妊治療の第一段階となる「タイミング法」では、医師の指導の下、薬を使いながら妊娠しやすいタイミングをはかっていきます。自然周期に合わせてタイミングを取る方法と、排卵誘発剤を摂取する方法などがありますが、今回は誘発剤を用いるタイミング法を試してみました。

排卵誘発剤を使うタイミング法の流れ

①生理が開始したらクリニックに予約

 生理が始まったらクリニックに連絡し、排卵のタイミングにあわせた診察予約を取ります。通常ですと生理から約12日目(排卵日)に診察日を設けるようにと言われますが、人によっては薬の作用で排卵周期が異なるため、予約日は医師と相談することになるでしょう。

②生理中に排卵誘発剤を摂取

 医師の指導通り、生理3〜5日間に、排卵誘発剤である「レトロゾール(Letrozol-Teva®)」を摂取しました。
 自然に排卵できている女性にとっても、これを摂取することにより1個以上の卵子を排卵できる可能性があり、より妊娠する確率が高くなるのだそう。そのような状況ですので、双子を授かる確率も高くなるといわれています。

③診察で卵子チェック

 この診察では、超音波で卵子の状態を見てもらいます。この日にもし複数の卵子を確認した場合は多胎児妊娠となる可能性もあることから、この周期にタイミングをはかるかどうかを医師から再度確認されます。

 また、排卵が予想よりも早いこともありえます。診療日にすでに排卵が終わっている場合はタイミング法を行う機会を逃してしまう可能性もありますが、気を落とさず頑張りましょう。

④ホルモン剤の自己注射

 さて、排卵が確認できてタイミング法を行うと決めた場合は、確実に排卵させるため、その日に「コリオモン(Choriomon®)」という性線刺激ホルモン剤を注射します。基本的にこれは自己注射となり、注射をする時間と本数(通常は1本)の指示がクリニックからあるので、それに従ってやってみました。説明書をよく読むことがとても大事ですが、もし不安な場合は、医師と相談することをおすすめします。

 ちなみに、この薬は全ての薬局に常備されているわけではありません。タイミング法を予定している周期は、期間内に用意しておけるよう、あらかじめ医師や薬局の方と相談するとよさそう。

⑤タイミング法の実施

 注射をしてから24〜36時間後に排卵するとされているので、注射をした日と翌日、翌々日がベストタイミングです。

 クリニックの治療だけに頼らず、普段から夫婦生活を楽しむことが大切だとも教わりました。あまりプレッシャーを感じすぎずにすごすと良いのかもしれません。

タイミング法をしてみて感じたこと

 ホルモン剤を使用したタイミング法は、生理周期に合わせてクリニックへ通ったり、ホルモン剤が有効な時間を気にしたりと、ストレスを感じやすい環境になってしまいがち。ですが、なるべくいつも通り楽しく過ごす方が大切な気がします。あまり予定を詰め込まず、余裕のあるスケジュールを心がけるとよいかもしれません。

**クリニックや身体の状態によって、治療方法が異なる場合があります。

次のステップは人工授精

 一番自然に近い妊活といわれているタイミング法を試したけれど、運悪く授かれなかったという場合、人工授精(AIH / Insémination Artificielle)にステップアップします。また、不妊検査の結果によっては、タイミング方を行わずに人工授精から治療を始めるというケースもあります。

保険が適用されます

 人工授精は健康保険を適用できることが多いですが、私が加入していた保険の契約では、適用が1子につき3回までとなっており、4回目からは全額負担というプランでした。この場合、見事第1子を出産した場合でも、第2子を望めば保険適用内の3回、保険を再度適用して人工授精を受けられます。
 保険の内容によって適用範囲が異なることもありますので、よく内容を確認し、不明点はあらかじめ契約されている保険会社へ相談するとよいでしょう。

診察から人工授精までの流れ

①診察の予約

 生理が始まったら、クリニックに連絡を取り、診察の日を決めます。

②排卵誘発剤の服用開始

 生理が始まった日から数えて2日目または3日目からの5日間、排卵誘発剤である「レトロゾール(Letrozol-Teva®)」を服用しました。

③診察日(排卵前)

 クリニックで卵子の状態や数をチェックしてもらいます。排卵誘発剤の影響で2個以上の卵子が見つかった場合は双子ができる可能性があるので、それでも人工授精を希望するか、と医師から説明や質問があるでしょう。ここは、排卵誘発剤を利用したタイミング法と同じ流れです。
 そのまま治療を行うと決定したら、人工授精を行う時間に排卵を合わせるため「コリオモン(Choriomon®)」という性線刺激ホルモン剤を注射する時間を医師から指定されます。

④人工授精当日

 この日はパートナーの協力が不可欠。男性は1時間以内に射精した精子をクリニックまで持って行かなくてはなりません。クリニックで行うこともできるので、ご自宅からの距離を考えてベストな方法を選択されると良いでしょう。

 精子をクリニックへ渡した約1時間後に、いよいよ人工授精。注入するだけですので痛みはなく、注入後約5分ほどそのままの姿勢でゆっくりとし、そのまま帰宅することができました。

 精子を提出する時間も決められていますので、その日は移動時間などを逆算して行動することが必要になるでしょう。

⑤人工授精翌日

 翌日の夜から、受精卵を着床しやすくする「ウトロゲスタン膣錠(Utrogestan)」を使用します。こちらは2週間続け、2週間後、自宅での妊娠検査で陽性反応が出た場合は使用を継続。検査の結果が陰性または生理がきた場合は使用を中止し、次の人工授精に備えます。

費用

1回につき約350フランかかりました。

人工授精をしてみてわかったこと

 流れは日本とほぼ同じかと思いますが、日本と比べると戸惑うこともあるかもしれません。スイスでは電話の受付時間が短い、必要な薬の入手が困難、自己注射の細かい説明がない、などの問題に直面しました。しかし、こちらから積極的に相談・提案することで解決できることがほとんどでした。あらかじめ予備知識をつけておくことで、早め早めに行動し、余裕を持って人工授精に挑めるといいですね。

<注意点>
**レトロゾール(排卵誘発剤)を使用することによって、通常の周期と比べて排卵が不規則になったり、それにより人工授精のタイミングを逃してしまったりする場合があります。
**治療を行っている周期でも、ご自身の判断でタイミングを積極的に取ることも良いとされています。
**コリオモンは自己注射です。注射と共に説明書が同封されていますが、初めて注射する場合は医師と相談してレクチャーを受けることをおすすめします。
**不妊治療に使用する薬や注射は、常備していない薬局が多くあります。その日に使用しなくてはならない物もありますので、当日焦らないためにも医師と相談して、早目に手に入れておくことが大事です。
** 費用や保険適用範囲は、お住まいの地域や加入している保険により異なる場合もあります。

体外受精や顕微鏡受精にステップアップ

 タイミング法から人工授精にステップアップするのと同じように、人工授精の次の段階として用意されている選択肢として、体外受精や顕微鏡受精があります。

 体外受精や顕微鏡受精は特別な設備が必要なため、クリニックによっては転院をしなくてはならないケースもあるかもしれません。まずは現在通っている婦人科に、体外受精や顕微鏡受精ができる設備があるかを確認しましょう。ない場合は、医師から別のクリニックを紹介してもらいます。その際に、今までの診断結果を全て新しいクリニックへ送ってもらうよう頼んでください。

体外受精や顕微鏡受精の流れ

①クリニックに初診の予約をする

 人気のクリニックですと空き時間が非常に限られていますので、決断されたら早めに初診の予約をすると良いでしょう。

②初診日

 この日は男性も同行します。体外受精や顕微鏡受精に関するとても大切な話がありますので、必ずカップルで受診してください。

 この日、医師のもとには、すでに私達のこれまでの検査結果などの基本情報が送られていたのですが、さらに詳しく生活習慣や家族の病気などに関しての質問がありました。その後、体外受精と顕微鏡受精についての概要・流れ・リスクについても説明を受けました。

 スイスの法律では、初診日から体外受精や顕微鏡受精を開始することはできず、1か月じっくり考えてから治療を開始しなければなりません。この日に、治療に関する注意点が書かれた書類が渡されますので、自宅に持ち帰りよく家族で相談してから決断しましょう。この日に治療開始はできませんが、男女ともに必要な血液検査をあらかじめしておくことはできます。

 私の場合は、この日の診察にかかった時間は1時間半ほどでした。

③治療開始のための予約

 パートナーと話し合い治療をすると決めたら、医師に勧められた日(次の生理開始日)に、クリニックに連絡をして予約を取ります。

④治療開始の診察

 いよいよ、治療に向けて準備開始。この日は、前回受け取った書類にサインをして医師に渡しましょう。
 今後の流れの説明を受け、次回の診察日を決めたら終了です。この日は男性は同行しなくても大丈夫です。

費用

 使用する薬の種類・量、また採卵数によっても費用が前後しますが、以下が大体の費用としてクリニックから伝えられた概算になります。費用は全額自己負担でした。

・ 体外受精 (Fécondationinvitro):約9,000スイスフラン
・ 顕微鏡受精 (IntraCytoplasmicSpermInjection):約10,000スイスフラン

**クリニックによって対応や費用が異なる場合があります。

体外受精または顕微鏡受精を実際にやってみました

 体外受精や顕微鏡受精を受けるクリニックが決まったら、実際に治療の開始です。ここでは、体外受精/顕微鏡受精に関しての承諾書に署名をした後からはじまる、採卵前日までの流れをご説明します。

体外受精/顕微鏡受精における採卵前日までの流れ

①診察

 治療開始の書類をクリニックに提出した際にこの予約をすることになります。生理が終わったあと、排卵日の前に診察日を設けることになるでしょう。
 この日は採卵に備えて、カテーテルを入れて子宮の様子をみていきます。同時に卵胞の状態も教えてくれるため、排卵日と予想される日あたりにタイミング法もしてみると良いとアドバイスがありました。
 また、この日はさらに次の生理日を予想し、採卵までの大体のスケジュールをたててもらいます。

②生理周期に合わせてパッチ剤を貼付

 予想生理日の2日前から約1週間前後、医師から指示されたパッチ剤を自分で摂取します。
私の場合は「女性ホルモン」ともいわれるエストロゲンを継続的に補充してくれるパッチ「エストラドット(Estradot)」を1日に2枚、下腹の左右に貼りました。時間を決め、24時間経ったら張り替えます。

③2度目の診察

 最後の生理日を確認後、卵胞の状態をチェックしてもらうための受診をしました。

④診察後の自己注射

 2度目の診察の翌日、または指定された日から約5日間は自己注射が必要です。卵胞を成熟させるための性線刺激ホルモン「メノプール®マルチドーズ(Menopur®Multidose)」を毎日なるべく決まった時間帯に注射しました。注射をする時間は、比較的予定が管理しやすく安静にできる夜が良いかもしれません。

⑤3度目の診察

 再度、卵胞の状態をチェックしてもらいます。状態によっては、そこで早発排卵防止のためのセトロタイド(Cetrotide)を打ってもらうことも。
 この日も、夜はメノプール®マルチドーズを注射しました。

⑥3度目の診察翌日

 この日も排卵のコントロールのため、自己注射を行います。
 朝:自己注射でセトロタイドを摂取
 夜:自己注射でメノプール®マルチドーズを摂取

⑦4度目の診察

 朝:再びセトロタイドを自己注射で摂取
 そのあと診察に訪れたクリニックで、卵胞の状態をチェックしてもらいます。その後ホルモン数値を確認するために採血をされました。その数値で採卵日が決定します。
 夜:再び自己注射でメノプール®マルチドーズを摂取

⑧採卵日2日前

朝:再びセトロタイドを自己注射で摂取
夜:クリニックで指定された時間に、排卵誘発のためのコリオモン(Choriomon)を指定された本数分、自己注射しました

⑨採卵前日

 この日の薬や注射はなく、性交渉はしないよう指示がありました。

自己注射と診察を複数回行って感じたこと

 前日以外の性交渉に関しては、禁止ではありませんでしたが、摂取しているホルモン剤などの影響なのか、私はこの期間にお腹が張った状態になったため、身体が通常とは異なる状態で違和感を感じました。無理はせず、健康で清潔な状態を保つことを優先したほうがよさそう。

 男性に関しては、採卵日に精子も採取するので、元気な精子が取れるように心掛けると良いそうです。

痛みをともなう採卵手術

採卵の流れ

 いよいよ採卵日。採卵日の朝は、麻酔を行うため絶飲食です。

 必ず前日までに、麻酔に関する注意事項、リスクについての書類をよく読みましょう。必要事項を記入する書類や、内容に同意して署名する必要がある書類もあります。余裕をもって準備してしておきましょう。
 また、クリニックによっては手術前に先払いしなければならない請求書があるかもしれません。しっかりと確認し、支払いがあれば支払った証明となるものを持って行くとよいです。

①出発前

 この日は必ずパートナーに付き添ってもらいましょう。採卵は手術ですので、お化粧や香水、コンタクトレンズは禁止されています。クリニックへ出かける前に、必要書類を全て持ったか今一度確認しましょう。

②手術開始30分前

 これまで私が通っていたクリニック「Care」には手術室がなかったため、採卵当日は他の医療センター(Medizinisches Zentrum Biel/Centre Médical Bienne)へ行きました。
 手術前に必ずお手洗いに行き、膀胱を空の状態にします。また、アクセサリー類は全て外します。コンタクトレンズはNGですがメガネは装着したままでも大丈夫といわれました。
 最後に、手術用の服に着替えて自分の名前が呼ばれるのを待ちます。

③手術開始15分前

 手術室では、独・仏・英語が話せる麻酔の先生や看護師さんがリラックスできるように対応してくれました。
 この日は全身麻酔で眠るのではなく、静脈注射による鎮静を行って痛みの感覚を抑えてから採卵の処置に入る、という流れでした。

④手術開始

 先生から、今から採卵を行いますと声かけが。周りの音や雰囲気はわかりますが、おそらく鎮静の効果でめまいがしていたので、目は開けにくい状態だったのを覚えています。
 担当の先生が膣から卵巣へ向かって採卵用の針を入れていき、卵巣の中にある卵胞から卵子を採取していきます。
 採卵されている私としては、開始直前は痛みを感じませんでしたが、最後の方は鎮静剤が切れてきたような感じで、痛みを感じる場面もありました。卵胞の数が多ければ多いほど刺す回数も増えて手術時間も伸びてしまうので、採卵時の痛みは人それぞれかと思います。

⑤約15分後手術終了

 医師からの診察があり、だいたい何個採卵できたか教えてもらえます。

 診察のころはもう麻酔は切れてますので、人によっては激痛が伴うかもしれません。幸い看護師さんが鎮痛剤を投与してくれたので、ベッドでしばらく安静にしていることができました。

 痛みが落ち着いてきたら、病院が朝食を用意してくれます。

<朝食例>
コーヒーまたは紅茶
パン2つ
オレンジジュース
チョコレート

 だいたい術後2時間ほど経てば、痛みはあるもののだんだん落ち着いてくるので、帰宅することができるようです。

パートナーは術後のタイミングで精子採取

 女性の採卵が終わり休んでいる間に、男性は精子を採取しに行かなければなりません。
指定された時間、場所へ行き、そこで採精します。精子を提出したら、卵子と受精させる行程はクリニックにお任せすることになります。

帰宅後

 医師から最終的に何個の卵子が採取できたかの連絡をもらい、今後の予定を再度確認します。

 痛みが続くようであれば痛み止めを飲んでも構いませんが、医師から指定されたもののみにしましょう。

ホルモン剤を補充

 その日の22時から8時間毎(22時・翌日6時・14時)にウトロゲスタン(Utrogestan)という膣錠を使用します。この錠剤は黄体ホルモンを補充することで高温期を保つためとのことでした。

 次はいよいよ、胚移植です!それまでは普段通り生活して構いませんが、医師の指示に従い、無理せずゆっくりと過ごすと良いでしょう。

受精卵を体内にもどす、新鮮胚移植

 さて、採卵の手術のあと、その周期中に受精できた受精卵を戻す方法が「新鮮胚移植」です。採卵後に行う受精には、通常、体外受精と顕微鏡受精があり、「胚移植」とは「受精卵を体内に戻すこと」というイメージでほぼ間違いないかと思います。

胚移植をする前に知っておいた方がよいこと

 残念ながら、採卵できた卵子が全て受精卵になるわけではなく、また、受精卵が全て成長するわけではありません。現時点(受精と培養後)でどのくらい卵が残っているのか気になる方は、胚移植日前に医師に教えてもらうことができます。

 ちなみに、日本では土日祝日も開いているクリニックがありますが、スイスでは医師もしっかりとお休みを取られるので、休日を避けての治療となることが基本のようです。

胚移植は採卵から数日後

 私の行っているクリニックでは、採卵が月曜日だった場合、胚移植は同じ週の金曜日となります。

 移植を受ける女性は、採卵日の22時から8時間毎に使用するウトロゲスタン(Utrogestan)膣錠を続けている状況。これは採卵の時にホルモン分泌を抑制または促進するための薬が使われることによって、黄体ホルモンの分泌が十分でなくなっている可能性があるため、膣錠で子宮内の環境を整える目的で使われているもの。

 また、葉酸など、その他処方されたビタミン剤などがあれば続けて取りましょう。

胚移植当日の流れ

 パートナーがお休みであれば一緒に来てもらうと良いでしょうが、必須ではありません。

①受精卵の確認

 医師または培養士から、現在残っている受精卵の数と質の説明を受け、その日に移植する受精卵の写真がもらえました。この日に移植されないその他の受精卵は冷凍されます。

②胚移植開始

 超音波の機械を使いながら、医師がカテーテルを膣に入れていきます。超音波で子宮の様子がわかるため、医師の説明を受けながら、自分の体内へ受精卵が入っていく様子を見ることができました。
 
 パートナーが胚移植に付き添っている場合、治療中に超音波機を持ってもらうなどの協力をしてもらうと、一緒に頑張っている連体感がありましたのでおすすめです。
 
 医師と相談して、この行程でパートナーに何ができるかを聞いてみるのもよいでしょう。

 特に問題がなければ、すぐに終わります。その後、念のために5〜10分ほど安静にして帰宅しました。

胚移植後の生活

 妊娠判定日まで、入浴はシャワーのみ。水泳や性生活は禁止です。また、膣錠はそれまで通り続けるよう言われたので、指示通りに行なっていました。
 それ以外はいつも通り過ごせますが、無理をせずリラックスして過ごしましょう。

判定日

 妊娠判定日は、胚移植から約10日後。

 判定日前に生理が来てしまうこともありますが、自分で判断せず、医師に連絡をしてどうすればよいか判断を仰ぎましょう。

 判定日の受診では血液検査を行います。たとえ生理中であっても、ホルモン数値で化学流産なのか通常の生理なのかがわかります。
 
 検査結果はすぐには出ませんので、時間を置いて連絡をもらうという感じでした。

 もしも出血してしまい、今回の周期では妊娠の可能性が低いと感じた場合、次回のために凍融解胚移植の説明を受けることができます。次の周期に行いたい場合は、念のために必要な薬をもらっておくと、スムーズに進むでしょう。

 今後、赤ちゃんを授かるまでに何度か胚移植を行ったり、場合によっては再度採卵を行う場合もあります。治療費や身体の負担などについてその都度パートナーの方と話し合い、医師と相談しながら治療を進めていくことになります。

最後に

不妊検査から胚移植までを体験談としてご紹介しましたが、治療方法はその人によって様々なステップがあることでしょう。パートナーとご自身の身体の状態や考え方を確認しあい、その時その時で、お二人でどの方向へ進むのかを決断する場面がたくさん訪れることと思います。
 
 スイスという異国の地での検査や治療はわからないことだらけかもしれません。実際、私もそうでした。スイスでの不妊治療について日本語で書かれた記事がなかなか見つからず、同じような体験をした日本人の方と知り合うまでは不安でいっぱいでした。ですので、もし今回の私の体験談が少しでもみなさんの検査/治療前の不安解消としてお役にたてれば幸いです。

 現在私はまだ治療継続中ですが、当サイトでは妊娠してからの体験談なども公開しています。ぜひそちらも参考になさってください。

<参考元クリニック>
Care
Rüschlistrasse 9, 2502 Biel/Bienne
+41 (0)32 499 09 09
praxis@care-biel.ch  
http://www.care-biel.ch/ (独・仏)

** 上記に記載している情報はあくまでも一個人が2017〜2018年5月に体験したことを元にしたものです。現在お住まいの地域や州、お身体の状態により、異なる場合があります。事前に病院に確認されることをお勧めします。
** カントンによっては確定申告の時に不妊治療費を申告すると、一部の費用が控除される場合があります。領収書はすべてとっておくことをおすすめします。

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