いざという時ためになる!ベルンの救急診療所

旅行者も利用できる救急診療所「Notfall」

 医療面で日本と並び世界でトップレベルのスイス。病院に加えて、市民と旅行者にとって万が一の時にはありがたい救急診療所もあります。

 今月のコラムでは、ミハエル・ホファー医師(Dr. Michael Hofer)をインタビューし、ベルンにある救急診療所「シティ・ノートファル(City Notfall AG:以下CN)」をご紹介します。

シティ・ノートファルについて詳しく教えてください。

Q : シティ・ノートファルの概要をお話しくださいますか?

 CNは、2005年にベルンの大学病院と民間診療所が設立し、2011年に更に開業医のネットワークが加わり、CN & ローカルメド グループ(City Notfall AG und Localmed-Gruppe:以下CNLG)として、現在5つの診療所を運営しています。CNはそのうち3つの救急診療所のひとつで、ここ、ベルン中央駅前のビルの中に入っています。ドイツ語の「Notfall」は「緊急・救急」を意味します。

 あと2つの救急診療所はドイツ語圏のケーニッツ市(Köniz)と、フランス語圏との境界に位置し独語と仏語が公用語となっているビエル/ビエンヌ市(Biel/Bienne)。そして、一般診療を行うベルン診療所(Ärztezentrum)と、小児科専門のロキュリノメ(Loculinomed)診療所がある同じ建物内にあります。(2018年1月時点)

 CNの従業員は一般開業医25名と準医療従事者30名を含め計60名で、医師のプロファイルはCNのウエブサイトで閲覧できます。

 ローカルメド グループの医師は一般開業医だけでなく、皮膚病、心臓病、眼科、婦人科の専門医と、4人の小児科専門医、そして熱帯医学が専門でもある医師が2名いて、その6名ないし7名がパートタイムのシフト体制で常時CNの外来患者に対応します。

 CN内の診察室は計14室で、うち2室は救急診療用、基本的な医療検査のための解析室や、最新モデルのレントゲン撮影機、エコー検査装置も完備。心電図検査、注入療法、小さな外科手術が常時提供できるほか、要望があれば黄熱病などの熱帯病の予防接種も提供できます。

Q : CNLGの理想と使命を簡潔に表すと?

 突き詰めると、「医療基準を順守しつつ、患者の皆さんが容易にアクセスできる良質医療を提供すること」です。

 例えば、心臓専門医が不在で心臓発作の急患があった場合、CNのガイドラインは、3分以内の可能な処置と救急車の搬送手配、続いて専門医のいる病院への10分以内に搬送完了させなければなりません。

 急患の場合、ここで診療するか、それとも必要な治療が可能な病院へ搬送するかという迅速かつ効果的な判断も、良質医療の根幹をなすのではないでしょうか。

Q : CNには、何名ぐらいの患者さんがどのような症状で来られますか?

 多岐にわたる様々な傷病の外来患者があります。一日平均70名前後ですが、季節によりばらつきが見られ、昨年の11月ごろから本年1月現在まで一日平均100~130名と増加傾向が続いています。

 インフルエンザや風邪などの冬の感染症が一因ですが、それにも増して、患者のかかりつけの一般開業医が休暇をとって不在であることが大きく影響しています。

 スイスでは、医療従事者も冬や夏には休暇を取りますので、その結果、救患はCNのような救急診療所を頼りにします。また、冬の感染症に代わって、夏は熱中症、蚊や蚤などによるひどい虫刺されも増加傾向にあります。

Q : 患者の視点に立ったCNの強味は何でしょうか?

 医療サービスにおける患者にとっての最大の関心は、上述したような医療の質のほか、診察待ち時間ではないでしょうか。

 救急診療所であるCNは、年間365日、受付時間及び診療時間ともに、朝7時から夜10時まで。毎日ノンストップ診療ですから、患者は昼休みや夜でも診療を受けられます。関連情報ですが、スイスの首都でもあるベルン市には、毎日24時間診療が可能な病院が7つあります。

 外来患者の待ち時間が一時間以上になる場合、患者の携帯電話にその旨のメッセージをお送りしますし、診療所に来る前に電話を頂ければ、おおよその待ち時間を事前にお伝えします。さらに、電話で診察順番券の番号を取得することも可能で、診療所に向かうべきタイミングが事前に予測できます。

 現在、サービスの効果で年間の外来患者の診療所での待ち時間は最長30分程度。加えて、診療所内では無料WiFiサービスも利用できます。

 CNの医師25名が意思疎通できる言語は、ドイツ語、英語、フランス語、イタリア語、スペイン語、ポーランド語、スウェーデン語、ポルトガル語、オランダ語、デンマーク語、すべて合わせると10言語。

 医師は日に6~7名のシフト制ですので、特定言語での意思疎通を希望される場合は、事前の予約をお勧めします。

スイスの医療について教えてください。

Q : スイスへの旅行者が健康面の予期せぬ問題に備えて、知っておくべきことがありますか?

 スイス国内での医療費に適用できる保険をかけておくことをお勧めします。スイスの医療費は国内で適用される医療費リストで決められており医師が独断で決めることはできませんが、決して安くはありません。

 また、冬は事前のインフルエンザ予防接種も一案でしょう。ところでスイスでは、25フランで受けられ、スイス国内の健康保険の加入者は、65歳以上である場合と医師が認める健康上の理由がある場合に限り保険適用となります。

Q : スイス人医師として、日本の医療についてどう思われますか?

 日本では人々がアクセスできる良質医療が提供されているものと思いますし、やや話が逸れますが、多くの長寿者に反映される日本の健康的な食生活には敬服いたします。

 日本人の勤勉さにも敬意を払いますが、その一方で、日本に限らず、勤勉さが超過労働となるときの医療における反動が懸念されます。

 年間有給休暇の完全消化の義務化や一日平均の就労時間を適度な範囲に限定することも一案ではないでしょうか。なぜなら、超過労働の防止は、患者にとって迷惑な医療ミスや事故を防止しつつ、良質医療の向上につながると思えるからです。

Q : 読者に向けたメッセージをお願いします!

 まず、すべての日本人の方々のご健康を心より願っております。その上で、私どもの診療があるスイス国内のいずれかの都市を訪れる機会があり、もしもその際に予期しなかった健康上の問題に見舞われた際には、どうぞご遠慮なくCNLGの救急診療所にお立ち寄りください。最善を尽くして対処いたします。

City Notfall AG und Localmed-Gruppe
Schanzenstrasse 4A, 3008 Bern
Tel: 031 326 20 00 Fax 031 326 20 01
info@citynotfall.ch
www.localmed.ch (独)
診療・受付時間:07:00 – 22:00

取材・撮影:Kaz Fujii、Yuko Kamata
翻訳・執筆:Kaz Fujii

 この度は色々ありがとうございました。スイス情報.comスタッフ一同、ミハエル ホファーさんの益々のご活躍を心よりお祈り申し上げます。

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