スイスで一番厳しい状況のティチーノ州、在住者によるコロナウイルスの影響レポート

イタリアとの国境と隣接している州、ティチーノ

 今、世界で猛威を振るっている新型コロナウイルス。中でも中国本土に次いでイタリアを中心としたヨーロッパ全域での感染拡大は大きな問題となっています。
 
 スイス南部のティチーノ州(Ticino)は、イタリアでのコロナウイルス感染者が集中している伊北部ロンバルディア州(Lombardia, Italia)と接しており、2月25日にスイス国内で初となるコロナウイルス感染者が確認された地域でもあります。

 私が暮らすのはティチーノ州最大の都市ルガーノ(Lugano)から少し外れた、のどかな住宅地。自宅の最寄り駅から電車で約15分のところに国境検問所があります。

 普段から徒歩や車で気軽に国境を越えてイタリアのスーパーやレストランに行ったりと、日本で言うなら隣県に行くような感覚でイタリアに行っています。ティチーノ州最初のコロナウイルス感染者の方もミラノを訪れた際に感染したそう。この一報を聞いた際、多くの人々が日常的にスイスとイタリアを行き来しているティチーノの今後に不安が広がりました。
 
 今回はイタリア国境からわずか8kmのところに住んでいる私が、新型コロナウイルスの影響で実際に経験したことや今*周りで起きている状況を一ティチーノ住民の目線からお伝えしたいと思います。

*2020年3月16日までの現状です

はじめて国境警察に呼び止められたのが1月下旬

 中国本土で新型肺炎が大流行と世間で騒がれ始めた1月下旬、私がいつものようにイタリアのスーパーに行こうと歩いて国境横断しようとした時、イタリアの国境警察官に止められ検問されました。

 まずIDの提示を求められ(私はスイス滞在許可証のカードを提示)、聞かれた内容は「国籍」「どこに住んでいるか」です。何度も同じ検問所を通っていますが止められたのはこの時が初めて。このときイタリアに入国する車道も渋滞しており歩行者も少なくはなかったのですが、検問で止められたのは、見回してもアジア人の私一人だけでした。

 わたし自身、特に「アジア人差別」と思われる発言や行動をされたことはありませんが、その当時はどこに行っても明らかに「アジア人」というだけで警戒されていました。ですが本当の意味でのコロナウイルス感染予防という感じはなく、私の周りも「遠い異国で起きているニュース」といった感じでどこか現実味がなく、何か感染予防をするなどの緊迫感はなかった印象です。

 しかし2月中旬に伊北部ロンバルディア州での集団感染、感染拡大を目の当たりにし事態が変わっていきました。国は違ってもすぐ近くの地域での事とあってティチーノの人々のコロナウイルス感染に対しての意識も変わっていったように思います。そしてコロナ感染はスイスでも瞬く間に広がっていき、予定されていたイベント等の中止も相次ぎました。

3月に入り、一気に状況が厳しくなったティチーノ州

 外務省は3月16日までに、ティチーノ州をスイスで唯一「渡航は止めてください」を示す「感染者危険情報レベル3」に指定しました。そのたった数日前の3月13日には義務教育を含む全ての教育施設の休校、14日にはスーパーや薬局を除く全ての飲食施設・商店の閉鎖を発表したばかり。数日間で次々とアップデートされる予防策水準の上昇に、みなさんも戸惑っていたようです。

 こちらの写真は、その発表があった少し前の、3月13日のルガーノ市内の様子。この日もティチーノらしい快晴のぽかぽか陽気で、普段であれば平日でも観光客で賑わっているルガーノの市街地なのですが、人気も少なくとても閑散としていました。

3月13日、各店舗や駅はウイルス対策でどのように変わったか?

 こちらは薬局・ファルマチーア(Farmacia)。ルガーノは旧市街だけでも数多くの薬局がありますが、私が見たほぼ全ての店舗で、店内入り口に「マスク売り切れ」「一度に店内に入れるのは5人まで」と貼り紙がされていました。ある店舗では店員さん(薬剤師)が店の外で待つ客に用件を伺ってから中に通して感染対策しているところもありました。

 ティチーノ州内のスイス大手スーパー・ミグロ(Migros)やCoop(コープ)。こちらも店舗や場所によって差がありますが私が普段利用している店舗では小麦粉やパスタ、特にスパゲッティー、缶詰めのトマトソース、冷凍野菜など、長期間保存が効く食品の品薄状態が目立ち、果物のバナナが完売の状態です。そして中規模の店舗でも店内に警備員が配置されていて、客同士が1m以上離れているかをチェックしています。

 ルガーノ中心地にあるデパート・マノー(Manor)に併設したレストラン。普段はランチタイムをピークに夕方まで常時混み合っているのですが、入り口には「店内に入れるのは従業員含む50人まで」の貼り紙がされており、屋内の席半分と屋外のテラス席・子ども用遊び場は閉鎖していました。

 旧市街のカフェやバー、洋服屋さん、携帯ショップなど、あらゆる店には「客同士の距離を空けて下さい」という案内がされています。

ルガーノ駅(Lugano Stazione)。ルガーノ駅からはスイスの主要都市、イタリア方面の列車が発着しています。ミラノ中央駅(Milano Centrale)、ミラノ・マルペンサ空港(Aeroporto di Milano Malpensa)行きの列車は完全に運休はしていないものの、電光掲示板にはイタリア方面へ向かう乗客への注意喚起としてイタリア国内での移動制限に気をつけるようにと書いてあります。駅構内は特にいつもと変わりないように見えました。

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イタリアからティチーノへ毎日やってくる労働者の数は約7万人!

 そしてティチーノにはイタリアから毎日約6万8千人の越境労働者がやって来ます。現在ティチーノに83ヶ所存在する国境検問所のうち9ヶ所は封鎖されましたが、スイスで働く労働許可証があればイタリアから通行できるとのこと。

 わたしの夫の職場にも数名イタリア人の同僚がおり、彼らは3月上旬から徐々に在宅勤務に切り替えているとのこと。先週までスイスのオフィスに出勤していた一人の同僚も車でスイスに入国する際、検問所で必要書類の提示や検温など入念なチェックがあり入国許可が下りるまで1時間費やしたといいます。夫の職場ではイタリア人、スイス人共に全社員が3月16日付けで在宅勤務に切り替わりました。

普段の生活ではマスクを全くしないスイスですが…

 私の周りでコロナウイルスに対するスイス人の変化を感じたのは、あちらこちらでマスク姿の人を見るようになったこと。今ではマスク着用を推奨するテレビCMも流れています。

 日本では当たり前の光景ですがヨーロッパの人々は日常的にマスクをしないので、その姿に非常事態を感じつつも「やっと着用し始めた」という安堵の気持ちが少しだけあったのも正直なところです。

 現在のスイスも日本と同様、マスクや消毒液は不足しています。私は、まだ日本から持ってきていたマスクや除菌シートを使っていますが、一番の感染予防策はやはり手洗いうがいの徹底と部屋の換気・保湿です。今のところ私の周りには新型コロナウイルスの感染者はいませんが、無症状の人も多いと聞くので、神経質になりすぎず、引き継ぎ体調管理は気をつけていこうと思っています。

デパートでは、なんと…今やる!?イタリアフェア

 残念なニュースばかり目にするようになったイタリアですが、ティチーノのデパート・マノーではイタリアフェアをやっていました。そのコーナー一帯がイタリアらしい明るく陽気な雰囲気に包まれていてなんだか元気をもらえそうです。こちらではイタリア各地の名産品が購入でき、イタリアに行けなくなった今だからこそ、こうしたイベントもイタリアを応援できる手段の一つなのかもしれません。
 
 現在ヨーロッパが新型コロナウイルス感染の中心となっていますが、スイスでも州や地域によって日毎に事態が変わっていっています。毎日不安は尽きませんが、一刻も早い収束と、そしてまた美しいヨーロッパの街に人々の笑顔が溢れることを願うばかりです。

とろりん
ぐーぜんと思うけど、すごいタイミングでイタリアフェアやるじょね!
 
テテ・ド・じい
ティチーノにはイタリア出身の人々も多いじゃろうから、イタリアの食品が並んでいるのを見て嬉しかったかもしれんのう

<参考サイト>
・Manor Lugano
Salita M. e A. Chiattone 10, 6900 Lugano
+41 (0)91 912 76 99
https://www.manor.ch/it/store-finder/store/LUG (伊・独・仏)
(撮影許可済み)

・Lugano SBB
Piazzale Stazione, 6900 Lugano
+41 (0)848 446 688
https://www.sbb.ch/it/stazione-servizi/stazioni/stazione-di-lugano.html (伊・独・仏・英)

** 記載の情報は2020年3月16日時点のものです。
** 当記事は状況が刻一刻と変わっていく中でのティチーノ州の様子で、こちらの情報が最新のものとは限りませんのでご承知下さい。

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