急にはじまった、行動制限のある生活
2020年4月現在、世界中で猛威を奮っている新型コロナウィルス。「自粛生活」などともいわれますが、実際に起こっている生活の変化はどのような感じなのでしょうか。各ご家庭の事情によって生活が大きく異なると思いますので参考になるか分かりませんが、とあるフランス語圏の家庭では、という一例として、我が家での状況をお伝えしようと思います。
スイスでは基本的に、3月から学校や飲食店・商業施設などの閉鎖、公共の場所で大人数で集まることを禁止、といった行動制限措置が続いています。わたしが住んでいるヴォー州(Vaud)は、感染爆発によって多くの死者が出ているフランスと国境が近いこともあり、連邦政府の規制を待たずに休業する店や、会社を自主的に休んだりしている人もいました。
わたしの夫も規制が始まってからは自宅でのリモートワークになり、これまで片道1時間以上かかっていた通勤時間が無くなって毎日スーツを着る必要もなくなった!と初日こそ喜んでいましたが、急な働き方の変化で戸惑う事やトラブルも多いようです。
子どもは就学前だったので、まだ保育所や幼稚園にも通っていなかったため、母子の基本的にはそれほど生活は変わらないだろうと思っていました。が、家からなかなか出られないのは想像していた以上に大変なことも。
また、ホームセンターなどは閉まっており、様々なサービス業者も営業をストップしたことから、今まで当たり前にできていたことができなかったり、手に入るものも入らなくなったりしています。
いつもはきれいに整えられているご近所との共有エリアの芝生や植木も伸び放題で、普通の生活を維持することが実はとても難しいことだったのだな、と実感しています。
尽きない子どもの体力 VS 鍵のかからない部屋でのテレワーク
平日、夫は就業開始時間から部屋にこもり、テレワーク。たまにコーヒーを飲みに出てきたりもしますが、基本的にはずっとパソコンの前に張り付いています。
わたしたちの家はとても古いので、それぞれの部屋の扉はこのような鍵で閉めるようになっています。鍵を閉めないと自然に開いてしまうような扉で、普段はそう気にもせず開けっ放しにしていたのですが、夫が仕事中は子どもが入っていかないようにドアの鍵を閉めるようにしました。
が、初日からさっそく子どもが隙をついて鍵をどこかに持っていってしまい、それ以来いまだに見つかりません…。それによってテレビ会議中に邪魔をしたりしないように常に見ておかなければいけなくなったので、普段以上に手がかかるようになってしまいました。
とにかく平日は子どもが退屈しないよう、お絵かき、粘土遊び、空き箱や空き缶を使って工作など、何かしら家の中でできる遊びを延々と繰り返しているのですが、曜日感覚もなくなり一日がとても長く感じられるようになった気がします。
近所の人たちと時間が被らないように気をつけながら裏庭で遊ばせたりもしていますが、思い切り走り回れるほどの広さはないので、体力があり余ってしまい、夜もなかなか寝ついてくれなくなりました。なんとか工夫して、子どもに体力を使わせる方法を考える必要がありますね。
室内アクティビティのおすすめはパン作り!
我が家では外出できなくなって以来、家でパンを焼くことが多くなりました。家の中は粉だらけになりますが、子どもに生地をこねさせておけばしばらく楽しんでくれますし、体力も使わせることができます。わたし自身も無心で生地をこねていると、鬱々としていた気分がリフレッシュできます。
午前中に焼いておけばお昼に焼きたてを食べられるので、まさに良いことずくめ。
ただ考えることはみんな同じようで、最近はスーパーや通販サイトで、酵母やパン型、クッキングシートなどが売り切れていることが多くなりました。
行動制限がかかってすぐはトイレットペーパーなどの紙類や殺菌ジェルといったものが品薄になりましたが、このような感じで、日が経つにつれ「え、これが?」というような意外なものが売り切れになったりもしています。
いよいよ酵母が手に入らなくなったら、次はうどんに挑戦してみようかと思っています。世界各地でも、自宅ですごす時間が多くなった方が料理にハマっているようですが、なるほどなという感じがしますね。
モノはあるけれど、食料調達には今までと違う注意が必要
食料品の買い出しには週末に夫かわたしが一人で行き、なるべく短時間で済ませるようにしています。スーパーなどは一度に入店できる人数を限定しているので、子どもを連れて行くとその分もカウントされてしまうためです。
例えば大手スーパー・ミグロ(Migros)の場合、公衆衛生局(OFSP/Office Fédéral de la Santé Publique)に従って10平方メートルあたり1人までの入店、とされていました。
郊外の小規模店でも時間によっては入店を待つ人の大行列ができていますが、みなさん文句も言わずきちんと2m間隔をあけて並んでいます。広い店舗だとその分一度にたくさんの人数が入店できるのですが、どうしても生鮮食品売り場に人が集中するので、感染予防を考えるとちょっと心配になることも。人数制限がされた店内に入っても、きちんとその中でソーシャルディスタンシングを意識することが大事ですね。
3月からは状況が毎日のように変わっているので、営業している店でも、状況に応じて開店日を減らしたり開店時間を大幅に変更したりしているようです。ですので、我が家では買い物へ出かけるたびに、直前に公式サイトで営業時間などを再確認してから行くようにしています。
通販サイトはいまも利用可能。でも配送可能日が…
現在、お店で直接販売されているのは食料品や日常必需品のみ。ですので、それ以外のものは全てネットで注文することになりました。
3月に入ってから必需品以外の日用品をいろいろと通販サイトで購入していますが、配送が少し遅れることはあっても、荷物が紛失されることもなく、きちんと手元に届いています。この状況の中、流通関係でお仕事されている方たちには本当に感謝しかありません。
ひとつ注意しておきたいことは、食料品を多く扱っているミグロやコープ(Coop)といった大手スーパーの提供しているネット配送サービスはパンク寸前だということ。注文画面につながりにくかったり、注文できても配送まで何日も待たなくてはいけなかったりします。
こちらは、ミグロの通販サイト「ル・ショップ(Le Shop)」で4月15日に注文をしようとしたところ、5月6日までは配送可能件数が完全に埋まっているという状況の写真です。これ以降の配送可能日が設定された時に早いもの勝ちで予約しなければならないのですが、まるで人気コンサートのチケット争奪戦のような状態です。配送日数には余裕をもってオーダーするとよさそう。
ちなみに、郵便局や配送業者の方もなるべく人と接触しないよう、受け取りサインの省略を取り入れるなど、柔軟に対応されているようす。先日は我が家の呼び鈴を鳴らした配達業者の方が、荷物を扉の前に置いて、ものすごいスピードで走り去っていきました。今までとは配達の様子も少しかわりましたが、トラブルも特に今のところありません。
こちらは先日やっとの思いで配送してもらったミグロの冷蔵物を入れる保冷バッグです。普段はその場で商品だけ出してバッグと保冷材は配達員にお返ししていたのですが、配達員さんとの接触を避けているため、我が家に残ったままになっています。配送に関わる唯一の心配事といえばこれくらいです。次回の配送の際に返せばいいのですが、次の注文まで時間があいてしまうので、それまで家においておこうかなと思います。
ここが正念場。一人ひとりの意識の違いが、きっと数字にあらわれます
このような感じで、先の見えない不安と不便な生活とでストレスや疲労は溜まっているものの、多くの人がきっちりルールを守り、不必要な外出は控えて家の中で過ごすように努力しているなと個人的には感じました。これほど周辺国が深刻な状況になっていながら、スイスで感染者数も死亡者数も比較的短期間で少なくなってきたのは、このような用心深く真面目な国民性に依るところが多いのではと思います。
スイス連邦政府の決めた行動制限は、長びいても人々が守れる内容でなければ意味がないからと、「禁止」ではなく「要請」になっている部分も多くあります。それに国民それぞれが応え、意識を変え、工夫しながら生活をしているのが、こうして数字になってあらわれてきたのかもしれません。
我が家でも「在宅勤務になったことで朝昼晩と家族そろって食事がとれるようになった」「ビデオ電話などで今まで以上に家族や友人と連絡しあうようになった」などとなるべくポジティブに考えるようにして、この苦難を乗り切ろうとしています。