2017年5月にスイスで食用認可された昆虫。販売開始から1年以上経った今、最大手スーパーのコープ(Coop)ではお馴染みとなり、見た目からは想像できない美味しさが反響を呼んでいます。
今月は、販売会社essentoの担当者に伺った最新情報とともに、スイスの昆虫食事情をお伝えします。
ヨーロッパで初めて昆虫食を取り入れたスイス
2017年にスイスでミールワームやコオロギなどが食用認可されました。なぜ、保守的なスイス人が”奇抜な”アイディアを推進したのでしょうか。それは、環境問題や健康に対する並々ならぬ興味と実行力がなせる技だったのです。
昆虫食を推進するヨーロッパ諸国
2018年1月1日以降、EUの28ヶ国で昆虫がノベルフード(=新規食品、珍しい食べ物)に追加され、フィンランド、ドイツ、ベルギー、イタリアなどでも昆虫食の取引が自由になっています。いずれ訪れるであろう食糧危機に備えて、国連がゴーサインを出したのが契機でした。
環境問題解決の糸口に
開発・販売を手がけるessento株式会社のフランチ・ヴェスターマイアーさんいわく、「動物性肉製品の生産と比べ、昆虫の飼育は水、飼料、土地などの資源消費量もCO2排出量も圧倒的に少ない」。地球規模で、30年後には現在の1.7倍の食料が必要になるという見通しを考慮すると、昆虫食は環境保護につながる大きな食改革なのです。
昆虫食の栄養素が健康を守る
平均寿命が長く、健康志向のスイス人が注目したのは昆虫食の栄養素。同氏は「極めて高たんぱく質で、体に良い不飽和脂肪酸やビタミンA、B、B12などのビタミン類、ミネラル、繊維が豊富。わくわくするでしょう?」と自信たっぷりです。
安全、味、販売経路を網羅したessentoの企画力
スイスの最大手スーパー、コープと3年がけで行った共同開発も売上を確実にしました。昆虫=病原菌がある、というイメージを払拭するのに一役買ってくれたのがコープ。ビオ商品に尽力しているコープなら、という理由で興味を示したり、信用して購入したりする人たちが多く見られたほどです。
予想を上回る反応と店舗展開
販売前のアンケートでは、スイス人の約半数が戸惑い、消極的でした。が、蓋を開けてみると「需要は予想を上回り、何度も売り切れた」(同氏)そうです。わずか1年で、都市部を中心にレストラン(25店以上)と販売店(Hitzberger含む60店舗以上)を開拓できたのは、美味しさが伴っている証拠ではないでしょうか。
人気商品ベスト5
安定した人気を誇る商品は次のとおりです。
偏見を無くすことが鍵
同社が商品開発と並行して力を入れているのは機会の提供。「消費者との交流は本当に大切で、試食会やワークショップは昆虫食を理解してもらえる絶好の機会。すでに130以上のイベントに携わっていますし、これからもたくさん予定されているんですよ」と同氏。スイスの昆虫食改革の今後に期待が高まります。
肝心のお味は?
弊社スタッフを含む4人がバーとハンバーガー・パテに挑戦しました。バーはフルーツの甘さと香りが濃厚、パテはバンズにオーロラソースと玉葱、レタスを挟んだらプロ級の仕上がりに。3人は「とにかく美味しい」、「さっぱりしている」、「においがない」と絶賛でした。1人は「食べる気にもならない」と拒否感を示しつつも、「不味いって叫びたかったのに、残念なほど美味しい」とのことなので、お味は上々だと言えそうです。
料理の多様性を模索する昆虫食クッキング
最高品質の時計やチョコレートを誇るスイス人が目指すのは、美味しくて美しい料理。「トップシェフのレシピや昆虫専門家による情報も取り入れた最高のレシピ本が完成した」という自慢のレシピの一部や料理は、ぜひホームページでもご覧ください。色彩豊かで美しい盛り付けは参考にしたくなるほどです。昆虫食レシピはこちらをどうぞ
試すなら、まずこの商品
商品は大きく分けて2つで「虫が見えるもの」と「虫が見えないもの」です。中でもパウダーは小麦粉のようで長期保存もきくため、非常食としても注目を浴びている使いやすい逸品。オンラインショップで購入し、自宅でのクッキングに取り入れているファンも増加中です。
フォカッチャやグリッシーニ、スープやシチューなど簡単にできるレシピもあるので、美味しく、おしゃれに環境問題に取り組んでみてはいかがでしょうか。
Essentoのオンラインショップ
一度食べてみたいな、と思ったチャレンジ精神のある方は、ぜひEssento オンラインショップを訪れてみてください。
【注意事項】
エビやカニなどに対するアレルギー反応と同様の反応を示すことがあります。その他、小麦やナッツなどが使用されていることもありますので、お試しの際は十分にお調べの上、お願いいたします。
<取材・協力>
Essento Food AG
essento.ch
参考サイト
WORLD ECONOMIC FORUM
編集:Yoriko Hess, Yuko Kamata
写真:Yuko Kamata