氷上の芸術「Art On Ice」とは?

 フィギュアスケート、ライブ音楽、光が織りなす華麗なこのショーは、スイスの冬を彩る一大イベントです。日本からは髙橋大輔元選手も登場し大観衆を魅了しました。

スイスが発信するアイスショーのコンセプト

 アート・オン・アイス( Art on Ice、以下AOI)は1995年にチューリッヒで始まり、今年で22回目を迎える、ヨーロッパ最大規模のアイスショーです。オリンピックなどで世界的に活躍したフィギュアスケーター達が、競技では魅せきらなかった演技力と表現力で華麗にパフォーマンスします。

 音楽は世界トップクラスのアーティストがステージで大迫力のライブ演奏を披露し、それに合わせてスケーターが氷上を妖精のように舞うのが特徴です。

 そして、アクロバットを含めたパフォーマンスとライブをさらに盛り上げてくれるのが、会場のあちこちから差し込まれるライトです。プログラムの内容やスピード・リズムに合わせて飛び交う色とりどりのライトアップもまさにアート。

 AOIは単なるアイスショーではなく、「スケートと音楽と光が融合した氷上のアート&エンターテイメント」といえるでしょう。

2017年の見どころ

 「スピンの貴公子」の誉れ高いランビエール元選手に加え、2011年に現役を、2015年にはAOIをも引退したスイス出身のサラ・マイヤー元選手が希望されて叶った出場に観衆の熱い視線が注がれました。

 そして、私たち日本人にとって最高の演出、ランビエール元選手と髙橋大輔元選手の共演は、今年の見どころのひとつ。ランビエール元選手が振り付けを担当し、共演も果たしたことのある2人が息のあった美しいプログラムを披露してくれました。

 また、髙橋元選手はソロでもホームレスを演じました。落ちぶれてしまった悲哀や戸惑いなども十分に感じさせつつ、切れのある大胆で力強い、スピーディーな演技にスイス人の観客も大喝采でした。

 ランビエール元選手がファンを公言し、長年愛聴しているイギリス出身のジェイムス・モリソンさんの出演にも注目が集まりました。モリソンさんの歌声とその音楽に合わせた演技に、観衆は息をのんだり興奮したりと、様々な感情を呼び起こされたようです。

 地元スイスから出演したチューリッヒ・カマー・オーケストラ( Zürcher Kammerorchester、チューリッヒ室内管弦楽団 )の演奏は音に深みを与えてくれ、スイス人ロックギタリストのスレドゥ( Slädu )さんが奏でるエレキギターとの共演でも最高の盛り上がりをみせてくれました。

テーマに沿って繰り広げられるステージ

 今回のテーマは「ニューヨーク」。スクリーンに 色鮮やかなアメリカン・ポップの映像が次々と映し出されます。リンクの周りに設置されているスポンサーの広告スペースには電車が映し出され、それが何周もしているのを見ると、観客は自分たちがニューヨークの街角にたたずんでいるような気がしてきました。

 プログラムの内容も、ニューヨークにちなんだものが勢ぞろい。路上にいる道化師がコミカルな動きで笑いを誘い、街角でダンスにあけくれる若者たちがエネルギーを放ち、ニューヨークならではのネオンが会場を照らします。アメリカ出身のR&Bの女王チャカ・カーンさんのライブで、その雰囲気は最高潮に達しました。

観客を巻き込むステージセッティング「移動舞台」

 アーティストが演奏するメインステージから見ると、リンクは緩やかなカーブを描いた縦長。そのステージの向かいと両側の合計3つの座席エリアがあります。

 丸い突起が中央に突き出たようなメインステージと、その突起の両脇に円盤のような2つのステージがあり、この円盤が移動舞台。

 アーティストやスケートダンサー達を乗せた移動舞台はリンクの端から端まで滑り周りすべてのサイドに移動し、3辺で待ち構える観衆の期待に応えるのです。

 また、リンク間際の観客席周辺には小さなステージがあり、そこでもダンサーが踊ったりパフォーマンスを見せたりするので、ステージやリンクは常に動きを見せています。

 天井から降ろされたローブにつかまって踊るダンサーや、色とデザインを駆使し緩急をつけたライトアップ。

 このように観客に息つく暇をも与えない演出と、観客がスケーターやアーティストと一体となって楽しめるのがAOIの魅力です。

進化しつづけるアート・オン・アイス

 スポーツ選手、ミュージシャン、ダンサー、舞台監督など、それぞれが肩書きを持ってはいるものの、AOIという大舞台では全員がエンターテイナー。そんな彼らが演出するのは出演者の統一感と、競技では見せられないショーとしての芸術的な一面、そして、観客がエンターテイナーたちと一体になれる空間です。観客の期待や興奮を、毎年少しずつ上回るような演出で、人々を虜にしているのでしょう。

 1995年初回の入場者は約6500人だったこのショーが、今ではメインのチューリッヒの他、ローザンヌとダヴォスでも開催されており、約8万人を動員するほどになったのもうなずけます。

 ショーの後すぐに来年のチケット予約が開始され、良い席は即完売になってしまうAOI。2018年もスイス情報.comならではの握手会やインタビュー観覧、アフター・ショー・パーティーへの特別ご招待など各種イベントを企画していますので、そちらにもどうぞご期待ください。

< 取材及び掲載協力・お問い合わせ >
Art on Ice Production AG
Breitackerstrasse 2, 8702 Zollikon
+41 (0)44 315 40 20
www.artonice.com

取材・撮影・: Yoriko Hess, Yuko Kamata
編集: Yoriko Hess, Yuko Kamata

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