楽隊の祭典「バーゼル・タトゥー」と特別インタビュー

バーゼルに登場!自衛隊と日体大のパフォーマンス

 バーゼル・タトゥーに、海上自衛隊東京音楽隊と、『集団行動』で有名な日本体育大学が同時に招待され、会場を埋め尽くした観客を感動と興奮の渦に巻き込みました。今月のコラムでは、祭典の内容や主催者の声、そして2団体への特別インタビューをご紹介します。

 毎年7月下旬にスイスのバーゼルで開催される同祭典は、今年で11回目を迎えました。エディンバラ・タトゥーに続いて2番目に規模が大きく、軍隊の敷地内で行われるものとしては世界唯一です。

毎年6〜7ヵ国から約20の楽団、約1,000人が出場

 タータンチェックのキルト姿で演奏するスコットランドの「バグパイプとドラム隊(The Massed Pipes and Drums)」や、ドラムだけで構成されたバーゼル出身の「トップ・シークレット・ドラム・コー(The Top Secret Drum Corps)」などが常連。

 2006年、創設者であり主催者ののエリク・ユリアート氏が開催したトップ・シークレット・ドラム・コーの公演を機に、現在では5大陸からトップレベルの軍隊所属楽団や民間楽団が招待され、独自のパフォーマンスで多くの観客を魅了しています。

「Tattoo」の意味

 「Tattoo」はオランダ語「Doe den tap toe」(蛇口を閉めろ)」の”tap toe”が由来。ビールサーバーの蛇口、あるいはワインの樽栓を閉めて、宿舎に帰れ、という合図だったのが、現在では「軍楽祭パレード」という意味で使われているそうです。

バーゼル・タトゥーの意義

 隊員を鼓舞したり国民を活気づけたりするための軍楽は、「軍と民間の楽隊が集合して演奏するイベント」でも披露されています。ラストでは、兵舎一面にテロに苦しむ人々、救出される被害者、微笑む子供たちなどの映像が映し出され、改めて「平和とは何か」を考える機会にもなりました。

バーゼル・タトゥーの人気

 夜9時30分から、7,800人を収容する屋外アリーナで映像やライトアップ、花火と共に音楽とマーチを鑑賞します。チケットは即完売するほど人気で、開催期間の10日間に10万人以上の人が訪れるそうです。

主催者、エリク・ユリアート氏の希望

 特筆すべきは、ユリアート氏が強く希望して招待した日本の2団体。スイス情報.comの問い合わせに同氏はこう答えてくれました。

 「海上自衛隊音楽隊はノルウェーのタトゥーで初めて拝見しました。その後、日本の音楽祭でまた拝見し、お話して、Basel Tattooに最適だと確信しました」

 「日本体育大学の『集団行動』のチームは、偶然にも海上自衛隊音楽隊と同じ時期に拝見しました。日本から2つの団体が参加することになったのは全くの偶然ですが、これほど素晴らしいことはありません」

 「私は常に、独自性のあるパフォーマンスでバーゼルの観客を魅了したいと思っており、日本のパフォーマンスはまさにそうでした」

< 取材及び掲載協力・お問い合わせ >

Basel Tattoo Productions GmbH
Glockengasse 4 4001 Basel
+41 (0)61 266 1002
office@baseltattoo.ch
https://www.baseltattoo.ch/

取材・撮影:Yoriko Hess, Yuko Kamata
編集:Yoriko Hess, Yuko Kamata


スイス情報.comが行ったインタビュー

 この度、スイス情報.comが音楽祭の会場を訪ね、この2団体に取材させていただきました。

手塚隊長・三宅三曹 ( 海上自衛隊東京音楽隊 )

 手塚裕之隊長とソプラノの三宅由佳莉三曹が、演奏や国民のみなさんに対する思いを聞かせてくださいました。

 夜のプレミアでは、真っ白な制服に身を包み、 姿勢正しく演奏する東京音楽隊と、優雅に歌う三宅三曹へのひときわ大きな拍手が会場に響き渡りました。お二人の真摯なお気持ちをお届けします。

Basel Tattooでのテーマや目的は何ですか?

手塚隊長:すばり「日本」でしょう!(笑)

 スイスは海も海軍もないので「日本+海」を常に意識してアピールしたいですね。スイスだけでなく日本国内の方々にも、海上自衛隊がスイスまで来て活動していることを、スイス情報.comを通じて発信できたらと思います。そして、三宅由佳莉というヴォーカル。彼女は日本自衛隊の音楽隊で初めて声楽枠で採用されました。その彼女の「持ち味」と「魅力」を最大限に出せるようにしたいです。

三宅三曹:今回も振袖を着て歌いますので、「日本の心」がスイスの方々に伝わればと思いますし、まるいイメージを持つ日本語のやさしさやあったかみも感じていただけたら何よりです。そして、スイスにお住まいの日本の方々にも日本のことを思い出していただいたり、ほっとしていただけたらと思います。

いつもどのように選曲されますか?

手塚隊長:Basel Tattooでは、日本的な楽曲や響きをできるだけ選びました。

三宅三曹:日本国内の演奏会でも、いつもお客様が喜んでくださること第一にプログラムを考えています。

手塚隊長:音楽演奏をする以上、芸術性を追求するのは当然ですが、我々は聴いていただく方々のために存在しているので、お客様に喜んでいただくことに主体をおいています。そのことが、海上自衛隊に興味を持っていただくきっかけになると思っています。

三宅三曹は写真どおり朗らかで美しい方、手塚隊長は写真と全く違い親しみやすくて驚きました

手塚隊長:思う壺ですね(笑) 自己管理ができないと部下の管理ができないと思っているので、常にスマートでありたいと気を付けています。

隊長について、どういう印象をお持ちですか?

手塚隊長:目の前じゃ言いにくいよね(笑)三宅三曹:いえ(笑)「大丈夫か?」と毎日声をかけてくださいます。私自身も、体調管理が一番気になりますし、気を使っているのですが、隊長はいろいろ気にかけてくださっています。

団結力とチームワークについて

三宅三曹:ソロをしていてすごく感じるのですが、自分の調子や体調が悪いときは「バックアップするよ!」という気持ちが伝わってきたり、逆に私の調子がすごくよかったらみんながそれに乗って盛り上げてくれる、そんなテンションを感じ、とても頼もしいです。

Basel Tattooでの演奏曲とポイントは何ですか?

手塚隊長:今年はオリンピックイヤーなので、1964年の東京オリンピックのファンファーレと行進曲です。次いで、「ふるさと」、「八木節」、退場するときは「君が代行進曲」です。日本的に、そして緩急をつけて演奏します。

三宅三曹:今回の振袖は真っ赤なんです。プレーヤーは真っ白の制服を着ていて、そこに赤の振袖なので、スイスと日本の国旗の色になります。また、私の部分は静と動でいう「静」で、そこから「動」の和太鼓に引き継いでいきます。

Basel Tattooでの最大の見所は?

手塚隊長:毎年出演している自衛隊音楽祭での定番パフォーマンスで、自衛隊の制式行進曲『軍艦』に乗せて、錨のフォーメーションを作ってローテーションするものです。

三宅三曹:錨が綺麗に回っていく姿を見ていただけたらいいなと思います。どこに座っても錨はご覧いただけると思います。

今後の予定は?

手塚隊長:本番が始まれば時間的にも心にも余裕ができるので、スイス滞在中は主催会社が演奏者向けに企画しているデイトリップにも参加したいですね。

三宅三曹:景色も空気も水も美味しいし、街並みや建物が全然違うので、ホテルから会場までお散歩しているだけでもすごく新鮮で楽しいです。また、スイスに来て、街が静かだと最初に思いました。その静けさが気持ちにゆとりをくれるような気がします。 もっとスイスの空気を吸ってみたいですし、街も楽しんでみたいです。

手塚隊長:帰りは、行きと同じドバイ経由で20時間かけて日本に帰る予定です。日本国内では年間、式典や演奏会を含めて110〜120回ほど演奏していますので、また忙しい毎日になりそうです。

Basel Tattoo 2016 海上自衛隊東京音楽隊フォトギャラリー

< 取材及び掲載協力・お問い合わせ >
Japan Self-Defense Force music band
海上自衛隊東京音楽隊( 防衛省海上自衛隊・海上幕僚監部 )
東京都新宿区市谷本村町5-1
+81 (0)120 063 792
mso-cadv@inet.msdf.mod.go.jp
https://www.mod.go.jp/msdf/tokyoband/
*こちらから東京音楽隊の演奏が視聴できます。

取材・撮影:Yoriko Hess, Yuko Kamata
編集:Yoriko Hess, Yuko Kamata


清原 伸彦先生  ( 日本体育大学名誉教授 )

練習や指導などについて

『集団行動』を行うために必要なことは?

 まずは、個の「自律」。あせらず自分の能力を理解し、自らそこに入り込んでチャレンジすること、これが基本なんです。だから強制は一切していません。そして、『集団行動』に時間的にも環境的にも集中することです。

個が自律しているからこそ、集団が生かされる

 先輩がいばって後輩に私的なことを要求すると、集団の悪いところが出てくるんです。自分にないものを人に要求しているんでしょうね。集団のいいところは、自分にないものを先輩から見て見習う、後輩が一生懸命やっていたらアドバイスをし、自分を見直す関係です。それができてお互いに信頼しあうと集団ってすごいんですよ。

練習以外にメンタル面で指導していることは?

 自信が笑顔に出てくるように指導しています。あとは感受性と献身的な心ですね。自分は間違いなくやるけど、ミスする人がいても思いやりが持てるような気持ちを作り上げていくことです。

指導するとき、重きを置いていることは?

 目標を設定して、それが達成できる環境を作ることです。お互いに考えていることや事実を言って、聞いて、自分がやる気になれる環境を作る。そして、いいところを見つけて、認めて、褒めるから、学生もモチベーションが湧くんだと思います。

練習をしていく上で、大変なことは?

 「感化」です。金曜日に5までやって、月曜日は6からできると思ったらまたゼロから。環境・状況に負けちゃうんですね。だから、意識をつけるために一週間の合宿をやるんです。それも、大広間に雑魚寝して昔の修学旅行みたいに。そういう生活をさせることで、自分にないものを見出したり、あるものを提供したりするようになるんです。

指導者として必要なことは?

 根気です。オーケストラと一緒ですね。弦楽器が奏でられない音がきたら管楽器や打楽器がきたりして、自分の一番いいところを出して作るのがオーケストラ。その素晴らしさに人は感動するんですよ。その域に達するには時間がかかるので、指導者に必要なのは我慢して待つ根気、そして忍耐でしょうね。

清原先生は怒らないで「言い聞かせる」そうですね

 僕は父親に怒られたことがないんです。父親は一緒に正座をして、僕に言いたいことをしゃべらせるんです、簡単な質問に答える形で。それを父親は黙って聞いて、そして「お父さんならこう思うぞ」と。最終的には言い聞かされて、納得していましたね。あと「固定観念が違う、必要に応じてやれ」と。父の教えが今、全部利用できます。役立ちましたね。

『集団行動』はパフォーマンスであると同時に、清原先生の指導・考え方の賜物

 先日、ドイツのタトゥーやロイヤル・エディンバラのタトゥーから興味を示されました。他にも、フェラーリの会長に招待されたトークショーで「あなたみたいな人が世界にいたら世界平和につながるね」と言われたんですよ。やっぱり認められているし、やっていることは間違いじゃないし、またやれる、と思いますね。これからも僕は、集団行動を通して心の問題を訴えたいと思っています。

 <取材及び掲載協力・お問い合わせ>
Nippon Sport Science University
日本体育大学 広報課
+81 (0)3 5706 0948
https://www.nittai.ac.jp/

創立125周年記念事業サイト「日体大が刻んだ125年 これまでと、これから」

編集:Yoriko Hess,Yuko Kamata
撮影:Yuko Kamata

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