芥川賞作家・中村文則氏の朗読イベント 2018 ( Zürich )

 2018年3月初旬、チューリッヒ(Zürich)のリテラテュルハウス(Literaturhaus)にて、芥川賞作家の中村文則氏を招いて行われた朗読イベント。10代の若いスイスの学生から年配の方まで幅広い層のファンが集まりました。当日のチケットは完売、大勢のオーディエンスがイベントの始めから終わりまで熱心に耳を傾けました。

ロマンティックな街で行われた朗読イベント
 壇上には作家の中村文則氏、司会のダニエラ・タンさん(Daniela Tan)、翻訳家のトーマス・エッゲンベルグ氏(Thomas Eggenberg)。イベントは中村氏による日本語の朗読、翻訳家によるドイツ語での朗読、そしてインタビューが行われ、日本語とドイツ語を交えてなごやかな雰囲気で進行しました。

 イベントでは最初に中村氏がドイツ語で挨拶をされたため、会場がどよめきました。司会者から今回初めてスイスを訪れた印象を尋ねられた中村氏は、こう答えてくれました。「チューリッヒはとても美しい、ロマンティックな街ですね!」

それぞれの作品にあらわれるテーマ
 今回、ドイツ語に翻訳刊行された「悪と仮面のルール」について、中村氏はフランスの哲学者であり作家でもるジャン・ポール・サルトル(Jean-Paul Sartre)の名言「実存は本質に先立つ」を取り上げてました。

「人間は生まれ持った性質より、どう生きるかが大事であると思います」

「この本では主人公が悪を押し付けられる運命や宿命でありながらも自分で道を切り開いて進んで行きます」

 インタビューでは、中村氏の作品テーマについての他にも、ドイツ語訳されているもう一つの作品「掏摸(スリ)」についてのエピソードも披露されていました。

 「テーマは作品を書きながらアイディアや言葉を選んで書き進めていくので最初の予定とは別の作品になっていて驚くことがあります」

「掏摸(スリ)は最初の段階で主人公の試練を書き、後に解決策を考えたので、解決策を見つけるまでに時間がかかり、当初短編だった予定が長編作品に仕上がりました」

ユーモラスで誠実なお人柄
 「作家になるには?」との会場からの質問に対しては、真摯に、かつ巧みなユーモアを交えて答えていらしたのが印象的でした。

「人の能力は変わらないと思います。何を見たか、読んだかで変わるので、名作を数多く読むことが大事だと思います」

「作家になって自分をさらけ出すようになりました」

「日本で作家になると大変です。出版社は作家を家に閉じ込めて書かせます。鍵は内側からは開けられません(笑)」

 1時間半近く続いた濃密な時間の後、隣室のアペロ会場に場所を変え、そちらでサイン会が行われました。中村氏の机の前には本を片手に順番を待つ長い行列ができていましたが、その一人一人に丁寧に接している様子に誠実な人柄がにじみ出ていました。

 「人間の内面の奥深いところを表現する」中村作品は、世界の各言語に翻訳され大いに注目されています。今回の朗読イベントにより作家としての中村氏の人間性の一端を知ることができ、ますます作品への関心が深まりました。

<開催場所>
Literaturhaus
Limmatquai 62, 8001 Zürich
 
<参考サイト>
Literaturhaus
Limmatquai 62, 8001 Zürich
+41 (0)44 254 50 08
http://www.literaturhaus.ch/ (独)
 
<アクセス>
チューリッヒ中央駅(Zürich HB)から約6分
チューリッヒ中央駅(Zürich HB)から、トラム4でラトハウス(Rathaus)下車、徒歩2分。

** 掲載されたイベントは終了しています。


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