珍しいチーズが勢ぞろい!スイスのチーズ特集

swissjoho-cheese-0311  スイスのチーズといえばグリュイエールやエメンタールが有名ですが、ざっと数えても400種類以上あるのをご存知ですか。

 今回その中からご紹介するのは、スイス情報.com選りすぐりの「珍しいチーズ」たち。まずは目でご堪能ください。読み終えたら、すぐに食べたくなること請け合いです。

| 山岳地方の人々の命綱だったチーズ

 新石器時代から牧畜を行っていた痕跡が残るスイス。牛の生乳は栄養豊富ですが、腐りやすいのが難点。それを長期保存するために編み出されたのが、バターやチーズなどの加工製品です。

 15世紀ごろまでは「サワーケーゼ(Sauerkäse)」と呼ばれるチーズが主流でしたが、16世紀にはハードタイプのチーズも、多くの地域で作られるようになったといわれます。

 チーズは主食としてだけでなく「お金」の役割も果たしており、峠を越えてイタリア側へ渡った後、穀物や香辛料、栗やワインといった品物と交換されていました。swissjoho-cheese-7217

| 国内外の需要が増え、生産場所も拡大

 需要が増えるにつれて低地でも生産され始め、19世紀には多くのチーズ製造所が誕生。1834年にはベルン州だけでおよそ2,000トン輸出した記録が残されており、ゴールドラッシュならぬ「チーズラッシュ」状態だったのだとか。

 好景気は長くは続きませんでしたが、不況の時代には家畜の飼育やチーズ製造法を見直す動きが生まれ、チーズの質が向上したとされます。


 では、多様なスイスチーズの一端をご紹介しましょう。

| シャスラルの歌い手 (Le chanteur du Chasseral)

swissjoho-Ziegenkäsevonlechanteur duchasseral ヌーシャテル州のヨーデル好きチーズ職人ロベルト・シュテファン(Robert Steffen)さん一家が作るのは、ヤギ乳のフレッシュチーズ。

 白くて丸いチーズを切り分けると、とてもなめらか。食べてみるとヤギ特有の香りはしますが、後味はさわやか。ヤギのチーズが初めての方でも、挑戦しやすいのではないでしょうか。

 この農場では家畜の飼育からチーズ製造までを一貫して行っているため、生乳を最も新鮮な状態で使用。ロベルトさん達は歌いながら、心を込めてチーズを作っているのだそうです。ヨーデルの響きを思い浮かべながら味わうのも一興です。

| カルトバッハ (Kaltbach)

swissjoho-Kaltbach_cheese-18 スイスの乳製品メーカー、エミ(Emmi AG)が2005年から高級チーズとして売り出しているブランド。ルツェルン州にある同名の村の洞窟には、グリュイエール(Le Gruyère AOP)やエメンタール(Emmentaler AOP)をはじめとするチーズが約5万個も眠っています。

 1950年代まで地元で倉庫として使われていたこの砂岩洞窟は、湿度94%、温度11~12度に保たれており、チーズ熟成に最適な環境なのだとか。

 一番人気のグリュイエール、12か月熟成のものは深いコクがあり、バランスのとれた上品な味わい。特別なときに食べたいチーズです。

| 5つの花 (5 Blüemli)

swissjoho-Kaeseleib_5Blüemli  アッペンツェル州のアロイス・コッホ社(Alois Koch AG)製造のこのチーズは、ラベンダーやキンセンカなど色とりどりの花に縁どられ、目にも鮮やか。

 口に入れると、ふわっとお花畑の香りが広がり、チーズというよりもむしろ花を食べているかのよう。通常は切り捨ててしまう外皮部分も一緒に食べることができ、さらに花の香りが強まります。チーズ自体は、比較的マイルド。

 同社は花だけでなく、様々な食品とチーズをかけあわせて新しい味を創造することに力を入れているそうです。現在日本のチーズ専門店と協議中とのことなので、日本で買える日も近いかもしれません。

| ゴムザー・ベルグケーゼ (Gomser Bergkäse)

swissjoho-BioGomser11_ Bergkaesemild_cheese  ヴァレー州ゴムス地方は、古くから人々もチーズも行き来していたといわれる交通の要衝でした。「オテル・リッツ」で有名になった実業家セザール・リッツ(César Ritz, 1850-1918)も、この地方の出身です。

 グルリンゲン(Gluringen)村のチーズ製造所(Bio Bergkäserei Goms)は、11の農場が共同で運営しています。

 マイルドタイプのチーズは、歯にからみつくほど柔らかで、クセがありません。このチーズをおろして、ジャガイモやリンゴと一緒にパイ生地に包んで焼く「コレラ(Cholera)」は、同地方の名物料理です。

| モンシュタイナー・ブラウアーケーゼ (Monsteiner Brauerkäse)

swissjoho-Monsteiner_Brauerchäscheese このチーズは、グラウビュンデン州ダボスの乳製品工場(Molkerei Davos)と、近郊の村モンシュタインのビール醸造所(BierVision Monstein AG)が共同で開発しました。

 大きなジャガイモのような形をしており、スモークチーズのような味わい。アペロとしてチーズプレートに加えたり、パンにはさんでサンドイッチにしても良さそうです。

 この独特な味は、ビールの製造過程で出た麦芽の絞りかすにチーズを漬け込み、さらに燻製して生まれたもの。この醸造所では、他にもビールの搾りかすを用いて乾燥肉を作るなど様々な試みに挑んでいます。

| フォルマッジーノ・ティチネーゼ (Formaggino Ticinese)

swissjoho-Formaggini_cheese ティチーノ州の特産品の1つで、地元の人達から愛されているフレッシュチーズ。フォルマッジーニ(Formaggini)と呼ばれることもあり、イタリア語で「小さいチーズ」を意味します。

 見た目は小さなお豆腐のようですが、食べてみると、とってもクリーミー。モッツアレラの代わりにカプレーゼにしたり、甘みもあるためデザートとしたりするのも美味しそうです。

 製造元のラッテリア・デル・ティチーノ(Latteria del Ticino)のおすすめの食べ方は「グロット・ティチネージ(Grotto Ticinesi)」。少量のオリーブオイルと胡椒、好みで塩と酢をかけるのだとか。

| ジンカーリン (Zincarlin)

swissjoho-Zincarlin 「コーヒーコップを逆さにしたよう」と形容されるこのチーズは、ティチーノ州ムッジオ谷だけにしかない隠れた名産品です。

 1900年頃には同地方のほとんどの家庭で作られていたといわれますが、手間がかかることもあり生産者は激減。2004年にスイスのスローフード協会に認定されて脚光を浴び、再び作られるようになりました。

 伝統的なレシピでは、牛の生乳にヤギ乳を少し加え、チーズ生地に胡椒を練りこむのが特徴的。クセが強く、今回取り上げたチーズの中でも特に個性的な味わいです。地元ではポレンタやゆでジャガイモ、栗はちみつに合わせて食べるそうです。


  スイスのチーズは、地域色が本当に豊か。小さな製造所でも、創意工夫してオリジナルの製品を生み出しており、チーズ産業の底力を感じます。1つの国でありながら、色々な種類を味わえるのもスイスならではの特権と言えるのではないでしょうか。みなさんも、ぜひ今まで食べたことのないチーズに目を向けてみてくださいね。


<参考文献>
Schweizer Käse in der Küche
Verlag Martin+Schaub GmbH (2013)
ISBN: 9783724519379

<取材協力・写真提供>
Le chanteur du Chasseral
Emmi KALTBACH
Alois Koch AG
Bio-Bergkäserei Goms
Molkerei Davos
Latteria del Ticino
Zincarlin

取材・編集: Asuka Shimoda, Yuko Kamata

 


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