スイスで受け継がれていく日本の味「おせち料理」

swissjoho_osechi_0  日本と全く環境が異なるスイスでも、お正月を祝う縁起物として作られているおせち料理。お重や盛り付けの色と美しさ、食材の豊富さ、そして願いが込められた料理には、日本の伝統と作り手の愛情も込められています。今回は「スイスで見つけたおせち料理」をお伝えします。

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おせち料理の由来

  「おせち」は、「御節供(おせちく)」の略で、奈良時代では五節句を祝う料理を指していましたが、のちに最も重要な節句であるお正月の料理を意味するようになりました。当初のご飯が盛られたような形から、明治時代には重箱に詰められるようになり、目出度さを「重ねる」という意味も加わりました。

 おせち料理は、基本的に「祝い肴三種」、「煮しめ」、「酢の物」、「焼き物」の四種類で構成されていて、祝い肴三種は黒豆、数の子、田作り(関東)、たたきごぼう(関西)を入れるのが一般的です。

 各料理に共通する点は長期保存ができることで、三が日は火を使わないで済むよう、火や酢を使用したり味を濃くしたりして調理していました。目的は、女性を家事から解放させるためという説と、三が日は聖なる火の使用をなるべく避けるため、という説があります。

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おせち料理が持つ意味

 皆さんは、毎年おせち料理を食べていますか? 全国農業共同組合中央会(JA全中)が2015年に行ったアンケートによると、「お正月におせち料理を食べる人」は約80%。理由は「習慣になっている」が約70%を占め、祖父母や父母の代からの影響によるものが大きいようです。

 そして、約80%が「おせちは家族団欒につながる」、約70%が「家事負担が減り、家族でゆったり過ごせる」と考え、42%が「現在でも広く食べられている伝統料理である」、41%が「見た目が綺麗、美しい」、36%が「縁起がよい」と感じていました。

 縁起がよいと感じるのは見た目の華やかさに加え、各料理に込められた願いや祈りを無意識のうちに感じているからかもしれません。

▶︎代表的な料理の願いと祈りはこちら

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スイスでおせち料理を作り続ける日本人たち

 「母親が作らなければ子供たちは知らずに育ってしまう」という思いから、数十年間、おせち料理を作り続けている日本人たちがいます。

 日本食材がほぼ販売されていなかった昔に比べ、今では多くが手に入るようになりました。とはいえ食感や味が違うものは日本帰国時に入手する、日本から送ってもらう、アジアショップに通う、など一手間かけて準備しています。

 今でも入手困難なのは、冬だけ朝市で見つかるチョロギやクワイ、早煮昆布、皮のみ冷凍で入手できる柚子。蕪も手に入りにくいのでラディッシュを代用し、そこから出るピンクを活かしています。

 日本と全く環境の異なるスイスで20〜25種類も作るそうですから、作るという意思と、工夫して楽しむ気持ち、そして食べさせてあげたい人への愛情が長年作り続けてこられた原動力になっているのですね。

【 上記以外で、日本人の女性が作っているおせち料理 】
高野豆腐の煮物 : 原料の大豆は邪気よけ
ラディッシュの菊花蕪もどき : ピンク色で目出度さを追加
こんにゃくのオランダ煮 : 手綱こんにゃくにすると縁結びに
亀甲しいたけ : 神様への供物である椎茸を万年生きる亀の甲羅に似せ健康を祈願

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スイスの日本料理店が提供するおせち料理

 今回ご紹介するのは、割烹温泉旅館「兎山」併設レストランの『おせち重』(130フラン、約14950円)。お客様への感謝の気持ちから3〜4セットを販売したところ口コミで広がり、2008年からは20セット限定で販売、年々注文が増え続け、2016年は早々に受注限定数に達してしまいました。こだわりの材料を集め、何日もかけて丁寧に調理した手作りのお重です。

 なぜ販売を始めたのか、オーナーの倉林正文さんと女将の倉林良子さんに伺ったところ「お客様への感謝の気持ちです。お正月という節目におせち料理という儀礼的な食事をし、仕切り直して、新しい気持ちで新年を迎えて頂きたいからです」と語られました。年末の繁忙期に時間と労力をかけておせち料理を作るという作業の根底にお客様を思う気持ちがあるのです。

▶︎兎山のおせち重 献立一覧はこちら

祈りと愛情、そして楽しむことが伝統継承へ

 おせち料理が元旦の食卓に並ぶ家庭で育った場合、おせち料理は「子供の頃から当たり前のように食べていたもの」かもしれません。しかし、親元や日本を離れてからは、それは当たり前などでは決してなく、作ってくれた人の愛情と祈りがこもっていた特別の料理だったことに、改めて気づいた方も少なくありません。そして、次は自分が愛情と祈りをこめて、おせち料理を作る立場になる方もいらっしゃいます。

 おせち料理と、それを囲んで過ごす家族との時間に感謝し楽しむことが、おせち料理を作り続けることにつながり、ひいては日本文化や伝統の継承につながるのではないでしょうか。

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<取材協力・お問い合わせ>

rz_ryokan_logo_cmyk割烹温泉旅館 兎山
Hasenbergstr. 74  8967 Widen Switzerland
Tel:  +41 56 648 40 00
Mail: reservation@hotel-hasenberg.ch
Website: www.hotel-hasenberg.ch

鈴木理香さん(スイス日本人同好会会長)
Tel: +41 44 942 42 70

参考URL
JA全中 ( おせち料理と正月に関する意識調査)
http://www.zenchu-ja.or.jp/wp-content/uploads/2015/12/up606.pdf

取材:Yoriko Hess
編集:Yoriko Hess, Yuko Kamata

 


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