スイスの噴水の役割 ー水の美しさと美味しさへの感謝ー

Jet d'Eau
Jet d’Eau Fountain Geneva

  美しい山々と氷河から流れる河川や、点在する1500以上の湖から「清らかな水に恵まれた国」という印象があるスイス。源泉のアルプス山脈とジュラ山脈は国土の約70%を、湖と河川は約4%を占めています。今回は、「スイスの水と噴水」についてご紹介します。

| スイスは噴水大国

 ベルンの観光名所として名高い旧市街の噴水群。ユニークな11基にはそれぞれ逸話があります。設置された16世紀から現在まで、人々の役に立ち、人々を楽しませてきました。また、チューリッヒは世界で最も噴水の多い街だそうで、その数は1224基。街の至る所で噴水を見かけます。高く吹き上げる噴水としては、ジュネーブにある高さ140mの噴水「ジェドー(Jet d’Eau)」が有名です。

| 噴水が作られた理由

 様々な説がありますが、有力かつ主なものは次の7つといえそうです。

1)湧き上がる水への信仰心
2)水飲み場
3)社交場
4)洗濯場
5)自然を生かした装飾
6)権力者の力の象徴
7)芸術と建築

 飲まないと4〜5日で死に至るほど、人体に必要不可欠な水。私たち人間は、古来から水を崇め、享受し、愛で、そして感謝してきました。その水を生活の中で身近に感じられる場所が噴水なのかもしれません。

Zähringerbrunnen,Bern
噴水の水を飲む、ということ

 水道局の厳しい基準を満たした上水道の水を引いているものがほとんどなので、「Kein Trinkwasser ( 飲用水ではない ) 」という表示がなければ飲めるのです。

たとえば、チューリッヒの上水道の内訳は、

約70%:アルプスの雪解け水などが流入するチューリヒ湖から
約15%:湧き水
約15%:地下水

 そのため、カルシウムやマグネシウムも多めで(硬度140〜190度)、市販のミネラルウォーターと比べて何の遜色もありません。スイスに本拠地をおくWWF(世界自然保護基金)は、「水道水よりミネラルウォーターの方が安全かつ健康的とはいえない」としています。

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| スイスの大企業ネスレによる水ビジネス

 ヨーロッパを筆頭に衛生面、健康面、おしゃれという点から、水道水ではなくミネラルウォーターを飲む習慣が根付いてきたのはここ10〜20年のこと。

 そこに目をつけたのが、チョコレートなどでお馴染みのネスレ(Nestlé)。今では水を扱う企業としても世界に名を馳せていて、綺麗な水源の水を買い取り、ペリエ、ヴィッテル、サンペルグリノなど約70品目を販売しています。

水ビジネスによる弊害

 この行動は、インドやパキスタンなどの地下水を枯渇させたり、水道施設が十分に行き渡っていない土地の水源を奪ったりして、貧しい人々を苦しめています。世界保健機構(WHO)によると、水源を奪われたため汚い水を飲み、毎日8秒に1人が命を落としているそうです。皮肉なことに、その実態をおさめたドキュメンタリー映画『Bottled Life』をスイス人ジャーナリストが製作して、数々の映画賞を受賞しました。

Weinmarktbrunnen, Luzern

 

| 噴水の水を飲用に

 コスト面では、ミネラルウォーターは水道水の500〜1000倍ほど高く、輸送費やペットボトルを製造・リサイクル・廃棄するコストを考えると環境にやさしいとは言えません。

 EUROMONITOR INTERNATIONALという市場調査会社が2012年に行った調べによると、スイスでは年間110Lのミネラルウォーターが消費されています(日本では33L)。もし、噴水から水をマイボトルに詰めて飲んだら500mlのペットボトルを220本節約したことになり、お財布にはもちろん、環境にもやさしい行動が取れるのです。

| 噴水で一休み

 スイスでは、噴水から清らかな水が時には勢い良く、時には穏やかに流れ、白いしぶきをあげたり泡を作ったりしながら、やさしい音で私たちを癒してくれています。

 持ち歩いているマイボトルに水を汲み、喉を潤しながら流れる水を眺め、水音を聴き、深呼吸をしてホッとすることができる噴水。スイスで噴水を見かけたら一休みしてみませんか?

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Fontana Antonio Bossi, Lugano

 

編集:Yoriko Hess,Yuko Kamata
撮影:Yuko Kamata

 


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